研究課題
最近、強磁性/高温超伝導・積層薄膜がボルテックスのピン止めやスピン偏極キャリアー注入などの基礎科学分野で注目されている。一方、このような2層膜は携帯電話中継基地局で使用される可変マイクロ波フィルター・デバイスとしての応用が期待されている。磁場を印加すると、強磁性層の透磁率が変調され、超伝導層を伝播するマイクロ波の伝播モード(速度)が変調できる。したがって定在波共鳴周波数がシフトできる。つまり、このような積層膜の作成と高温超伝導体の磁場下でのマイクロ波吸収が重要な研究課題となる。さらに、積層膜作成中の下層膜(強磁性層と高温超伝導層)の劣化の問題と、応用上その経時劣化が大きな問題となる。本研究では、強磁性(LSMO,LBMO)単層膜の作成および積層膜LSMO/YBCOとLBMO/YBCO(高温超伝導層)の作成と劣化について研究した。またYBCO超伝導薄膜の磁場下でのマイクロ波吸収を調べた。LSMO(La(Sr)MnO)単層薄膜およびLSMO/YBCO(YBaCuO)積層薄膜をイオンビームスパッタ法でLAOとMgO基板上に作成した。LSMO薄膜は500度Cの低温までエピタキシャル成長した。これは酸素プラズマの供給によって促進できた。LAO基板では格子整合のために明瞭なステップ・テラス成長したが、MgO基板では格子不整合のために粒状成長した。LSMO上層膜はa配向およびc配向YBCO下層膜上にエピタキシャル成長できた。しかし下層YBCO膜が少し劣化したので、今度さらに低い温度で作成しなければならない。LBMO(La(Ba)MnO)薄膜をMgOとLAO基板およびa/c配向YBCO下層膜上に同時に堆積した。下層YBCO膜の結晶性は積層中に若干劣化した。上層LBMOの結晶性は単層LBMOのものより劣っていたが、その原因は積層中の下層YBCOの結晶性劣化だと思われる。a/c配向YBCO薄膜の77Kでのマイクロ波吸収測定を種々の磁場配置で磁場を掃引して行った。両サンプル共に低磁場に大きなピークを示し、これは表面マイスナー遮蔽電流に基づくものである。磁場が超伝導面に垂直の場合、吸収強度は掃引速度の増加につれて増大した。これはボルテックスの粘性によって生じるボルテックスの侵入遅れに基づく過渡的遮蔽電流の増大に起因する。a配向YBCOでは異方的ボルテックス・ダイナミクスを明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Proc.Progress In Electromagnetics Research Symposium 2005, Hangzhou, China, Aug.22-26
ページ: 110-114
International Journal of Nanoscience 13-5(in press)
Proc.International Conference on Composites/Nano Engineering, Tenerife, Spain, Aug.1-6