研究概要 |
衝突噴流による高温面の急速冷却に関する実験を行った.実験範囲は,噴流速度3 15m/s,噴流液温20 95℃,噴流径2,3mm,高温面温度250 600℃,高温面材質,銅,黄銅,炭素鋼の3種類で,試験流体として水をもちいている. 高温加熱面を衝突噴流で冷却するとき,冷却開始すなわち高温面の濡れ開始の状況は,高温面の温度が熱力学的過熱限界温度以上にある場合でかつ冷却能力が大きい場合とそれ以外では大きく異なることを高速ビデオカメラでの観察から明らかにした.熱力学的過熱限界温度以上でかつ冷却能力が大きい範囲では,噴流接触後高温面は非常に短い周期で濡れと乾きを繰り返しながら緩やかな冷却状態の継続となっている.その後,高温面がある温度まで降下すると,安定な濡れが確保されるようになる.安定な濡れが確保されると,その濡れ面は急速に拡大を始めることになる. 本研究では安定な濡れが確保されるまでの高温面上の流動状況と温度に注目した.まず,高温面に噴流が衝突した直後の数十μsでは,急激な蒸気の発生後,その蒸気によって高温面は濡らされない状態となっている.そして,この数十μsでの固液の接触中に伝えられる熱流束と温度の伝搬深さは数ナノmのオーダーとなっている.この数ナノmの液層が急激に加熱され,自発核生成の状態となっている可能性が高いことを見出した.しかし,自発核生成を決定する物理量が,単に温度だけであるのか必要なエネルギー(熱)量であるのか検討の余地が残されている. 一方,高温面は濡れと非濡れ状態を非常に短い周期で繰り返されながら緩やかに冷却され,遂に安定な濡れの状態に達する.この到達時間(滞在時間と呼ぶ)については,多くの実験データを基に明らかにし,その予測式を提案するに至っている.この滞在時間は,固液の熱物値の比((ρcλ)_1/ (ρcλ)_s:ρ,c,λはそれぞれ密度,比熱,熱伝導率である)に大きく依存することを実験的に明らかにしている.
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