研究概要 |
本年度はビスマス層状複合酸化物強誘電体の一つであるBi_2WO_6(BWO)単結晶の圧電素子への展開を中心に研究を行った。このBWOは斜方晶系mm2に属し、計算による自発分極値P_s=42μC/cm^2を有する。また高いキュリー点(T_c=940℃)をもつため、高温用圧電結晶材料として期待できる。しかし、バルク結晶作製法の一つであるチョクラルスキー法にて作製した際、冷却過程での相転移通過中に発生するクラックにより良質な単結晶が得られない。そこで、本研究代表者のグループではこれまでBWOと共晶系を形成するフラックス剤として四ホウ酸リチウム(Li_2B_4O_7:LBO)を見出し、徐冷法にてT_c以下で結晶作製を試み、板状のBWOシングルドメイン単結晶を得た。そこで、本研究では、圧電定数d_<33>が測定可能なc軸方向に厚い結晶を得るため、同フラツクスを用いてブリッジマン法による単結晶作製を試みた。実験は、純度4N酸化物粉末から合成したBWO粉末をLBOとモル比で7:3〜8:2となるよう秤量し、混合後、直径10mm、長さ100mmの白金坩堝に充填した。結晶作製条件は育成雰囲気を大気中とし、炉最高温度960℃、坩堝降下速度0.5-1.0mm/h、炉内温度勾配10℃/cmである。作製したBWO結晶中の単一分域部分は育成方向に対して優先的な成長方位が<100>or<010>方向であり、また圧電性を有することが判明し、c軸方向に対して厚さ4mm以上のシングルドメイン単結晶が得られることが分かった。これらの成果は、今後このBWO結晶を圧電素子材料として展開する際に重要な知見となり得る。 さらに来年度従事する「不揮発性メモリ用強誘電体薄膜の特性劣化機構の解明」の研究テーマの予備実験として、化学溶液堆積法およびrfマグネトロンスパッタリング法により反強誘電体PbZrO_3膜や強誘電体Pb(Zr, Ti)O_3膜の作製、さらに作製した膜の強誘電特性の評価を行った。
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