近年、ナノメートルスケールにも達する巨大分子が注目されている。なぜなら、このような大きさを有する分子の機能や物性が未開拓であると同時に、既存の化学にはその構造を効率的にかつ精密につくる方法論さえも欠落しているからである。巨大分子をつくるためには、従来の共有結合で分子を一つ一つつなげる方法では限界がある。しかしながら、生体系にみられるような、ある程度の大きさのパーツを分子設計し、これを自己組織化させることができれば、巨大な分子でも簡単につくることが可能である。最近著者らは、パネル状配位子を金属イオンにより張り合わせ、内部空間を有する巨大分子をつくりあげる新概念、「分子パネリング」を展開した。すなわち、パネル状配位子の配位点(窒素原子)の位置と数を合理的に設計し、それらを金属イオンで張り合わせることで、多面体構造が精密に組み上がる。たとえば、水溶液中でシス位を保護したパラジウム錯体1と正三角形の各頂点に配位点を有する三座配位子2を混ぜ合わせるだけで、M_6L_4(金属:配位子=6:4)組成のかご型錯体3が定量的に組み上がる。そこで本研究では、遷移金属イオンと有機多座配位子との配位結合を駆動力とした自己組織化により、新規なかご状構造を安定にかつ高効率・高選択的に構築することを目的としている。その分子設計として、まず、ピリジンカルボキシアミドを有する平面状の有機多座配位子を用い、分子内で水素結合により配位子のコンフォメーションを規制する。次に、それらを遷移金属イオンにより自己組織化することで、巨大なかご型構造体を一義的に組み上げる。このようにして組み上がった構造体は、水素結合と配位結合からなる特異な内部空間を有することから、新奇な物性や反応性の発現が期待できる。
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