研究概要 |
個人個人に最適化された「テーラーメード医療」の実現に向けて,迅速,簡便かつ安価な一塩基多型(SNPs)検出法の開発が重要な課題となっている。本研究では、DNAの高次構造形成と有機小分子リガンドを併用する,全く独自のSNPs蛍光検出法の開発を目的とする。具体的には,脱塩基部位含有プローブDNAを検体DNAとハイブリダイゼーションさせることで標的塩基の向側に微小空間を構築し,同空間中における有機小分子リガンド/核酸塩基間の相互作用の有無をモニターすることにより遺伝子中の一塩基の違いを検出する。本研究では,チミン(T)検出リガンドの開発に焦点を絞って研究を遂行し,これまでにアミロライドが高選択的なT検出リガンドとして機能することを見出した。アミロライドはTに対して解離定数μM以下の強力な親和性を有し,実試料に準じたPCR産物の迅速かつ簡便な解析に適応可能である。しかし,アミロライドは標的塩基に対して蛍光消光応答を示すもので,より優れた検出系の開発には蛍光応答特性の改善が重要な研究課題となる。 本年度は,種々の3,5-ジアミノピラジン化合物とモデル脱塩基部位含有二重鎖DNA(11-merあるいは23-mer)との相互作用を評価した。その結果,DCPC(3,5-diamino-6-chloro-2-pyrazinecarbonitrile)が蛍光強度増加型のT検出リガンドとして機能することを見出した。また,実試料に準じたPCR産物の解析に適用した結果,ガン抑制遣伝子p53(codon280)やK-ras遺伝子(codon12),CYP2C8(740A>G)等の変異検出が可能であることから,DCPCが充分な実用性を有しているものと結論できる。 以上のように本研究では,蛍光強度増加型のチミン検出リガンドの開発を達成した。
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