ホウ素を高濃度にドープした導電性ダイヤモンド薄膜は、元来ダイヤモンドがもつ性質に加え、電位窓が広い、バックグラウンド電流が小さい、劣化しにくい等の優れた電気化学特性を持っているため、新規電極材料として期待されている。なかでも生体関連物質・環境汚染物質等の微量分析は、その簡便性、感度の高さから近年注目を集めている。 しかし、いくつかの物質についてはダイヤモンド電極に対して不活性であるため、その有用性を利用できない場合があった。そこで本研究では、特に触媒として機能する金属をダイヤモンド電極にイオン注入して「金属-ダイヤモンド複合電極」を作製し、より多くの重要な物質について高感度電気化学的微量分析を行うことを試みた。電気化学的に金属を電着させて複合電極を作製する方法、またはクラスターを担持する方法などとの比較も行った。さらにHPLCを組み合わせて分離も行い、実試料の微量検出への応用展開も行った。 その結果、グルコース、ヒ素などについて、高感度で電気化学的検出を行うことに成功した。さらに、耐久性の評価を行ったところ、金属単独電極による感度に比べ、きわめて高感度に検出でき、電気化学的センサーとして利用できる基礎的データを多く得ることができた。
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