研究概要 |
研究の最終的なゴールは,感覚運動パターンの自律探索を通して脳・身体・環境間の相互作用を利用する戦略を発見するような人工システムの開発である.このような相互作用は一貫的・協調的・知的な行動の創発に重要である.これまでに行った研究は,互いに関連して大きく三つに類別できる: 1)感覚-運動データの情報構造をさらに特徴づけるために,多変量でマルチスケールな指標をいくつか提案し例証した.それらの結果は,身体-制御構造-環境の相互作用が,様々な機能レベル,空間スケール,時間スケールにおける統計的な規則と情報構造を誘導することを示している. 2)「身体を持つエージェントは,環境から受動的に感覚情報を取り込むのではなく,環境で行動することで取り込むのだ.つまりエージェントは情報を積極的に構造化し選択し,利用する」というのが,我々が発表し議論した適応行動の基本原理である(Lungarella etal.,2006など).このことから,協調した活動は神経活動に影響を与えるといえる. (3)発表論文(Lungarella etal.,2005; Sporns and Lungarella,2006)では,局所的な特徴と大域的なパターンの存在が,「結合」と「複雑さ」という基準によってどのように同定・定量化されるかを示した.ウェーブレット解析に基づく優れた手法を用いた同様な取り組み(Pitti et al.,2005; Pitti et al.,2006)では,身体性と感覚運動系のダイナミクスが,大域的なスケールだけでなく局所的な構造にもつながっていることが示されている.もうひとつの重要なことがらは,感覚刺激の構造化されたパターンは,身体と感覚運動系の相互作用だけでなく,身体形態に基づくダイナミクスと環境との間の相互作用の結果でもあるということである.
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