研究概要 |
土地利用パターンが河川水質に与える影響の把握を研究目的とした。北海道東部の標津と厚岸地域において、河川水栄養塩濃度と土地利用の関係を調査した。中標津町と標津町を流下する標津川とその支流、厚岸町と標茶町を流下する別寒辺牛川とその支流それぞれの集水域における土地利用パターンを地形図を用いて解析した。また、2004年11月中旬の平水時に標津川流域と別寒辺牛川流域で24ヶ所ずつで河川水サンプリングを行い、硝酸態窒素(NO_3-N)、全窒素(TN)及び全リン(TP)濃度を分析した。その結果、両地域でのほとんどのサンプリング地点でNO_3-N濃度の範囲はほぼ同じ0.01-1.6mgL^<-1>,TN濃度も0.06-2.5mgL^<-1>であった。しかし、厚岸での一つ地点でのNO_3-NとTN濃度は非常に高く、それぞれ3.1と3.8mgL^<-1>であり、周辺の点源汚染の影響を受けていることが考えられた。TP濃度は、NO_3-NおよびTN濃度に比べて非常に低く、その範囲は厚岸で0.01-0.12mgL^<-1>であり、標津では0.01-0.08mgL^<-1>であった。回帰分析により、厚岸では流域内での畑地面積割合とNO_3-NやTN濃度の間有意な正の相関(それぞれr=0.72と0.78)があり、その相関は標津流域ではより高くそれぞれr=0.89と0.91があった。これらの結果は、流域内での農業の集約度により河川水窒素濃度が増加することを示唆している。一方、TP濃度は畑地面積割合と相関を示さなかった。このことは、農耕地からのリン酸は流域内での畑作強度よりも降雨や融雪期で流出される可能性を示唆している。
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