人類の生き残り戦略が今、問われている。人類が平和的に生き残るための方策の1つとして、過度に化石資源に依存してきた従来の生産システムを生物資源を基礎とした現代的システムに変換することが重要になってきている。ここでは、バクテリアセルロースや環境負荷の小さい形で生産可能なケナフ繊維などのセルロース原料から、まず、高付加価値製品として医療用の材料の調製法を検討するとともに、その評価法を検討する。 16年度は現在の世界における関連情報の文献調査を行うとともに、バクテリアセルロースの調製法に関する検討を行った。その結果、パルプ廃液成分であるリグニンスルホン酸添加培地で製造したセルロース膜に関して新たな知見を得た。リグニンスルホン酸添加培地での精製セルロースは高い結晶化度を持ち、しかもリグニンスルホン酸の取り込みも少ないことを明らかにした。また、生成セルロース膜の物性も良好で、今後の医療材料の検討に期待が持てる結果を得た。これらの成果を国際会議で発表した。 今後の医療材料の評価に関してはその手法の検討が重要であるが、固体NMRによる評価方法について検討した。固体NMRの測定装置がまだ一般化していないこと、セルロースの固体NMRの測定自体を行える研究者が日本には少ないことなどが問題であった。しかし、予備的な測定を筑波の森林総合研究所で試みたところその測定に成功した。したがって、今後の研究の進展に大いに期待が持てる。
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