研究概要 |
同胞種のオナジマイマイとコハクオナジマイマイの幼貝を採集し、個体別に飼育して成熟させ、未交尾の成熟個体を得た。空媒性のフェロモン活性を検出するためのオルファクトメータを用い、本2種間の雑種第一代の性フェロモン感受性および性フェロモン生産能を検定した。その結果、雑種第一代の分泌する空媒性物質は、コハクオナジマイマイの成貝もオナジマイマイの成貝も誘引することが判明した。これは、雑種第一代が両種由来のゲノムをもつことをふまえれば説明可能な結果である。すなわち、雑種第一代は、両種の性フェロモン分子を生産する能力があり、2種のそれぞれを誘引する機能をもつ性フェロモンを分泌できることがわかる。一方、雑種第一代を被験者として、2種の分泌する空媒性物質に雑種第一代が誘引されるか否かを検定したところ、雑種第一代は2種のどちらにも同等に誘引されることを示唆する結果が得られた。しかし、この結果は、感受性がまったくない状態でランダムに行動する場合にも得られるものである。そこで、この結果が性フェロモンの感受性を欠くことに起因するのか、それとも雑種が両種の性フェロモンに同等に誘引されるためであるのか、それらを検証するために、オルファクトメータの選択肢の一方に1種をおき、他方はなにも入れない状態で雑種第一代に選択させたところ、雑種第一代はやはり二者択一の選択肢のどちらにも同等に向かう結果が得られた。片方にどちらの種を置いても、結果は同等であった。これらの結果は、雑種第一代は2種の性フェロモンを分泌できる点では雑種強勢の状態にあるものの,フェロモン感受性においては雑種崩壊の状態にあり、性フェロモンを感受できないことが判明した。
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