研究概要 |
アルコール性肝障害モデル動物(PPARαノックアウトマウスにアルコールを慢性的に与えた動物)を用いて、アルコール性肝障害の機序と性差を明らかにする。既に採取してある4%のアルコール食(Lieber食)を6ヶ月与えた雌の野生型とPPARα-nullマウスの肝を用いて、種々の肝障害の指標、酸化ストレス、酸化ストレス消去系、炎症、細胞増殖に係る指標について、検討した。肝重量はアルコール摂取によって増加したが、遺伝子型による差異はみとめられなかった。血清のAST, ALT値もアルコール摂取によって増加したが、遺伝子型の差異はみとめられなかった。肝のTG値は野生型マウスにおける増加が著しかったが、血清は逆で、PPARα-nullマウスにおける増加が顕著であった。肝の酸化ストレスの消去系(GPx、SOD、GST)の酵素活性にもアルコール投与の影響が認められた。GRxとSODの活性はPPARα-nullマウスにおいて約半分にまで低下し、GST活性値は逆に増大していた。ついで、アルコールの代謝酵素への影響も検討した。アルコールの投与は両遺伝子型マウスにおいて、ADHの活性には影響を与えなかった。しかし、アルコール投与はPPARα-nullマウス肝700g上清のALDH活性を著しく低下させた。同マウスのサイトゾールにおけるALDH活性にはほとんど影響を与えないことから、700g上清におけるALDH活性の低下はミトコンドリアのALDH活性の低下によると判断された。野生型マウスにはアルコール代謝酵素の変化は認められなかった。以上の結果を総合すると、アルコールの雌マウス肝への影響はPPARα-nullマウスにおいて顕著に認められるが、既報の雄マウスより軽度であるとえる。
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