研究概要 |
イランと鹿児島におけるコホート研究から、鹿児島において見出されたHLA-A^*02、Cw^*08のHAM発症抑制効果はイランにおいては認められないことが明らかになった。一方、HLA-DRB1^*0101陽性者は鹿児島、イラン双方において無症候性キャリアー(HC)群よりHAM患者群で高頻度であり、2つの地域で共通したHAM発症促進因子であった。この結果を受けて、日本人、イラン人に感染しているHTLV-I株のLTR, env, pX領域の塩基配列を決定し、分子系統樹を作成した。その結果、イランのHTLV-1 Taxの塩基配列は、HAMになりやすい株として我々が報告した、鹿児島のTax subgroup Aと共通の4つの塩基置換(2アミノ酸変異を伴う)を持ち、さらに6つの塩基置換(4アミノ酸変異を伴う)を伴っていたが、HLA-A^*02拘束性CTLのdominant epitope(Tax 11-19)の配列は鹿児島株(Tax subgroup AおよびB)とイラン株で同一であった。一方、分子系統樹から、日本人株、イラン人株はともにHTLV-IのCosmopolitan A groupに属するものの、明確に異なったSubgroupを形成することが示された。そこで、各株の発現ベクターを構築してluciferase assayを行い、転写活性化能を比較したが、LTRおよびNFkBプロモーターに対するTaxの転写活性化能は、イラン株Tax、鹿児島株Tax subgroup A, Bすべて同等であり、Taxとしての機能に差がないことがわかった。さらに、HAM発症に関与する非HLA因子として、IL-10-592A/C SNPがHAM発症と無症候性キャリアーにおける低プロウイルス量の双方と関連することを報告したが、IL-10により制御を受けるT細胞上のCo-stimulatory moleculeの発現量がHAM患者とHCとの間で異なることを見出した。
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