HDL産生の律速因子である膜蛋白ABCA1の安定化と、その遊離型アポリポ蛋白質A-I(apoA-I)との相互作用について検討した。ABCA1は、HDL低下作用を持つ抗高脂血症薬probucolによって、形質膜状で不活性化されると同時にcalpainによる分解に対して安定化させられる。これはGLUT-1やβ-Integrinなどの対照膜蛋白には見られない現象であった。この結果、probucol処理した肝細胞からはapoA-Iが遊離の状態で分泌され、活性のあるABCA1とapoA-Iの作用でHDLapoA-Iに対する特異的単クローン抗体を培地に添加することで肝細胞のHDL産生が強く抑制され、アポリポ蛋白質産生細胞ではそれが一旦細胞外に分泌されて後ABCA1と反応してHDLを産生するという、一種のautocrine作用によるものであることが分かった。
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