研究概要 |
オントンジャワ海台は,120Maの下部マントル物質の溶融に伴う大容積の噴出生成物である。この巨大海台の成因をさらに追求するため,ソロモン諸島・中部マライタ島から採取した試料について,レニウム-オスミウム同位体,ルテシウム-ハフニウム同位体を分析した。その結果,Pb, Nd, Sr同位体比で,異なった特徴を示すSinggalo, Kwaimbaita各層群に関して,オスミウム,ハフニウム同位体ともに層群ごとに異なった値を示した。Singgalo層群試料は,年代補正後でKwaimbaita層群試料より高いオスミウム同位体比を示した。一方,前者は後者より,低いハフニウム同位体比を示した。これらの結果は,オントンジャワ海台が下部マントル起源であるという従来提唱されている説と矛盾せず,しかし一方で,地殻物質のリサイクルの寄与も岩石によって相当程度存在することも示唆する。さて,120Ma前に起きたオントンジャワ海台の大量の溶岩噴出は白亜紀の海洋無酸素事変とも密接に関わると考えられている。本研究では,オントンジャワ海台活動時期とその前後の試料のレニウム-オスミウム同位体組成から,無酸素事変との関連を探ることを試みた。試料は2005年8月にイタリアの野外調査で採取した。現在までに予察的な結果が得られ,得られたデータの範囲では,無酸素事変の時期の堆積物のオスミウム同位体比は当時の海水のオスミウム同位体比と一致している。しかしながら,結論を導くにはデータが十分でなく,残りの研究期間での試料の分析と解析の完了を目指す。
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