研究課題
ため池の改修技術として、補強土工法を用いた技術開発を実施している。今年度の研究成果は、数値解析と実験に関わるものである。実験による耐久性評価については、特殊な大型土嚢を用いた高耐久性ため池の耐久性を確認するために農村工学研究所の3次元震動実験装置を用いて震動実験を実施した。震動実験のモデル堤体の高さは2.2m、天端幅は1.7m、斜面勾配は1:1.15である。堤体はシルト質砂を用いて作成し密度をDr90%に設定した。土嚢には、建設廃材であるリサイクル骨材を使用した。堤体の中には、加速度計や変位計、土圧計などの計測装置を設置して、振動中の挙動を把握している。入力した地震動は、周波数f=3.8Hzとして、最大加速度を5段階に設定した。最大加速度はそれぞれのステージでamax=300gals ; amax:500gals ; amax=700gals ; amax=1000gals ; amax=1200gals.である。ため池堤体のモデルはいずれの地震動に対しても安定性を保っており、天端の沈下量についても十分抑制されていることが明らかとなった。数値解析の成果としては、有限要素法による動的応答解析と簡便な解析方法としてニューマーク法による解析を実施した。有限要素法による解析はニューマーク法よりも精度よく堤体の変形を予測することができ、堤体の詳細解析として有力なツールとなることが明らかとなった。ニューマーク法は、簡便な解析として1次設計に用いることができる。有限要素法によって得られた堤体の変形は震動実験結果と極めてよく一致している。これらの解析結果から、ため池堤体を代表するたった1つの材料物性、すなわち弾性から塑性に至る物性の変化を考慮した特性を用いることによって実際のモデルの挙動を適切に再現できることが明らかとなった。特に堤体の天端の沈下量や斜面先部分の変形などの破壊現象に密接に関係する点で満足のいく整合性が取れている。以上のように今回提案している土嚢を用いたため池堤体の構築技術は、既設のため池の改修にも適用可能で地震時の安全性のみならず、集中豪雨による洪水が堤体を越流する場合にも極めて高い安全性を有していることが明らかとなった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Proc.41th Annual conference, JGS 41