研究概要 |
モデル植物のシロイヌナズナをはじめ様々な植物において、複数の耐性遺伝子を一度に働かせる転写因子を導入する遺伝子組換え技術がストレス耐性植物の作出に有効であることが確認されている。本研究課題では、その一環として、イネの低温ストレスで機能するシス因子に結合するトランス因子(転写因子)の単離を目指している。これまでに低温ストレス誘導性に関わる新規のシス因子を同定し、このシス因子を含むJRC2606,JRC0528,JRC0332遺伝子のプロモーター領域を用いて、酵母のワンハイブリッドスクリーニング法により、このシス因子に結合するトランス因子を探索した。 本年度は、JRC2606のプロモーター領域を用いてOsDREB1J及びOsRAP2.4Aを単離した。両遺伝子は共にAP2ドメインというDNA結合領域を持つ転写因子であり、OsDREB1JのホモログであるOsDREB1AはDREというシス因子に結合することが知られている。両遺伝子の単離に用いたJRC2606のプロモーター領域にはこのDREに相当する配列が存在していたので、このDREに変異を与えたコンストラクト(JRC2606-M)を用いて実験した結果、OsDREB1J, OsRAP2.4Aは結合しなかった。これらの結果より、OsDREB1J, OsRAP2.4AはJRC2606のプロモーター領域内のDREに結合していると予想された。 一方、JRC0528,JRC0332遺伝子のプロモーター領域を用いてスクリーニングを行った結果、nuclear LIM interacter-interacting factorに相同なOsNLI-IF1,OsNLI-IF2が共通に単離された。この結果から、OsNLI-IF1,OsNLI-IF2はJRC0528,JRC0332遺伝子のプロモーター領域が共通に持つ新規のシス因子に結合していると予想された。
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