四肢短縮型小人症に属する軟骨無形成症の一つである致死型軟骨無形成症(thanatophoric dysplasia : TD)は繊維芽細胞増殖因子受容体III型(FGFR3)遺伝子の突然変異に起因し、FGFR3^<R248C>およびFGFR3^<K650E>はそれぞれTD I型、TD II型を発症させることが知られているが、この症例の骨・軟骨の病理組織異常については、それほど解析がすすんでいない。本年度の研究では、カナダ、McGill大学との共同研究で得られたTD I型、TD II型を示すヒト胎児の大腿骨・脛骨試料を病理組織学的に解析することで、TDにおける軟骨内骨化の異常、特に血管侵入と軟骨細胞のアポトーシスについて解明した。正常の胎児試料における明瞭な骨・軟骨の境界構造及び軟骨の石灰化と血管侵入を可能にする肥大化細胞層が均一な層を形成することに対して、致死型軟骨無形成症(TD II)では、骨・軟骨の境界構造が陥凹状を示しており、肥大化細胞層も不均一な構造を示していることが分かった。その大きな原因として、TD IIでは骨組織からの血管侵入が局所的に亢進していることが推察された。また、TD IIの組織切片ではVEGFの発現が上昇していることから、VEGF受容体を有している血管内皮細胞の軟骨侵入が亢進されることが強く示唆された。さらに、肥大化層の軟骨細胞の多くがアポトーシスに陥っていることも明らかとなった。このような変異型FGFR3シグナルはJAK/stat3を介して軟骨細胞のVEGF発現を上昇させることを見出した。以上より、FGFR3^<K650E>で誘導される致死型軟骨無形成症は、軟骨細胞の増殖抑制と骨組織からの血管侵入亢進の両方で軟骨組織の低形成を招くことが考えられる(論文作成中)。
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