研究概要 |
水田表層部では、表面水中で生育した光合成生物による窒素の有機化とその分解に伴う窒素の無機化、加えて土壌有機物の分解に伴う無機態窒素の供給が、さらにこれら各種の窒素のその後の形態変化が活発に進行している環境であり、水田肥沃度の観点からきわめて重要な環境であるにもかかわらず、これまでほとんど研究されてこなかった。本研究では、愛知県安城農業技術センター内の水田圃場を対象に、水稲生育期間を通しての水田土壌表層部における窒素の動態を、有機態・無機態各種窒素および、窒素の形態変化に関与する微生物群集(硝化菌、脱窒菌)の動態から解明することを目的とした。 本年度は、硝化菌を対象に群集構造が比較的単純と考えられる水生雑草(アオウキクサ、タイヌビエ、ホッスモ)に注目し、アンモニアモノオキシダーゼに特異的なプライマー(amoA1F-GC, amoA2R)を用いて硝化菌のDNAをPCR増幅し、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)のバンドパターンから水生雑草表面に生育する硝化菌の群集を解析した。その結果、水生雑草の採取時期にかかわらず、水生雑草ごとにDGGEバンドパターンが類似していたことから、雑草の種類によって硝化菌群集が異なること、また、タイヌビエ試料から最も多くのDGGEバンドが得られ、アオウキクサ試料で最もDGGEバンドが少なかったことより、雑草の種類によって、水生雑草表面の硝化菌群集の多様性も異なることが判明した。
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