熱中症とオーバートレーニング症候群の病態機序を解明するために、持久性運動選手の強化トレーニング期間の前後で暑熱環境下において同一の運動負荷を実施し、それぞれ運動前と運動中深部体温が39℃になった時点で運動を終了し、急性運動とトレーニングの影響の両者について検討するために、採血により血漿サンプルを採取した。筋損傷の指標であり熱中症において急性腎不全の原因物質ともなるミオグロビン、熱ストレスに対する防御タンパクであるheat shock protein 70、炎症を促進するサイトカインとしてinterleukin-1βを酵素免疫測定法(ELISA)にて定量した。血中ミオグロビンとheat shock protein 70については各運動負荷で上昇が認められたが、interleukin-1βの変動は認められず、また強化トレーニングの前後ではこれらの指標に有意な影響は認められなかった。現在、仲介因子の候補となる他のサイトカインの変動を検討中である。そのために、ELISA以外のサイトカイン測定法として、cytometric bead array systemによる測定法に関する予備検討を行った。この測定法は、6種類のサイトカインを同時に測定できるが、ELISA法と比べ感度がよくなく、特に運動前値の安静時のデータが検出限界未満となるため、本研究には適さないものと判断された。引き続き、高感度ELISA法にて検討を進めつつある。測定法自体は定まってきたため、上記とは別の運動負荷時の免疫低下に対する栄養学的介入の影響についても、検討を進めつつある。11月着任であったため、研究発表にまで至っていないが、研究自体は順調に進んでいる。
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