研究概要 |
本研究の目的は、大気汚染物質であるオゾンと1-ニトロナフタレンの相乗効果による毒性がどのようなメカニズムによるものかを明らかにすることである。研究分担者は以前の所属先であるカリフォルニア大学デービス校で、ラットにオゾンと1-ニトロナフタレンに照射し、プロテオームデータを収集する実験を行なってきた。京都大学では、これらのデータを解析するためのデータベースを開発し、既に京都大学で開発しているゲノムとパスウェイのデータベースであるKEGGと統合してメカニズムの解明に応用する。 本年度は、プロテオーム解析の拡張として、気道内腔における炎症伝達物質のメタボローム解析を行なった。ここではデービス校のKara Schmeltzerの協力のもと、18のラットクループにおいてアラキドン酸・リノレン酸経路の35化合物と19種類のサイトカイン・ケモカインを解析した。その結果、長期的なオゾンの照射により、1-ニトロナフタレンを原因とする炎症応答が上昇することが明らかになった。特に、16種類のオキシリピンと7種類のサイトカインの濃度が統計的に有意な変化を見せた。このようにオゾンと1-ニトロナフタレンの相乗効果による肺に対する毒性を明らかにするためにはメタボロームデータが有効であることが分かった。プロテオームデータの方は、本年度購入したPhoretix 2D Expressionソフトウェアを用いた216枚の2Dゲルイメージの解析を進めている。現在、1,024個のスポットに対応するタンパク質の同定、アノテーション、定量化を行なっている。この作業が完了し次第、メタボロームデータとプロテオームデータを統合解析するためのデータベース化に取りかかる予定である。
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