本研究の目的は、データベース開発・構築の技術を習得することと、それを利用して2つのクラスの大気汚染物質間のメカニズムの違いと相乗効果による毒性を明らかにすることである。特に、以前からの研究テーマであるオゾンと1-ニトロナフタレンのラットに対する影響解析によって得られたメタボロームとプロテオームのデータを関連付けるための統合データベースの開発を提案した。データベースの設計は完了し、MySQLを用いてLungToxデータベースとして実装した。このデータベースの重要な部分は、発現パターンの影響を受けた部分をKEGGパスウェイ中で表示するところである。もともとトランスクリプトームデータ用に設計されたKegArrayがこの目的に適当であることが判明したので、プロテオーム・メタボロームデータを扱えるように拡張することを提案した。現在、この提案に沿ってKegArrayの改良が進められているところである。さらに、本研究に関連する代謝系のデータをKEGGプロジェクトに提供し、KEGGパスウェイデータに統合された。ラットの気道におけるプロテオーム解析は、以前所属していた研究室との共同研究が進められており、実験が終了次第LungToxデータベースに統合し、インターネットで公開する。 今年度は、2次元電気泳動(2DE)における実験後の定量解析時に生じる変動誤差に関する研究も行った。以前の研究室で開始した研究を完了して論文としてまとめたところiHUPOでの年次総会のキーノートスピーチに招待された。この後2つのレビュー論文としてまとめた。1つ目はこれまでの研究の拡張で、新しくリリースされたImageMaster 2D Platinumの評価を含めたものである。2つ目は現状の2DE解析における変動誤差の原因を議論した招待論文である。ここでは2DEが有力な定量プロテオミクス手法となる原動力となった可視化を含めたソフトウェアアルゴリズムの改良についてレビューした。具体的な内容以下の通り。(1)タンパク質の可視化と画像認識、(2)内部標準化手法、(3)バックグラウンド除去アルゴリズム、(4)分布の正規性、(5)2DE解析ソフトウェアパッケージを評価するための標準化されたテストの必要性。
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