研究概要 |
本年度は、平面単板積層材(LVL)の力学特性を理論的に解析するため、ヒノキ材を用いた10層平面LVLのモデル化について検討した。まず、ヒノキ原木から厚さ2〜3ミリのロータリーレース単板を製造した。単板は、繊維直交方向に幅150ミリに裁断し、この短冊状の単板を5枚並べて1枚の層とした。市販のレゾルシノール樹脂接着剤を用いて、各層間の繊維方向を±10°傾斜させた10層平面LVLを作製した。このLVLについて、圧縮試験、曲げ試験およびせん断試験を実施し、材料物性を明らかにした。曲げ試験に関してはNFEN408フランス規格に準じて4点曲げ試験を行った。また、立方体のブロック試験片を切り出し、T,RおよびL方向の圧縮およびせん断弾性係数を求めた。その際、変位測定にデジタルカメラによる画像解析法の導入を試みた。同様に、ヒノキ素材の力学特性は、同じ原木を用いて各種材料試験を行った。LVLの力学変化をモデル化するために、実験によって得られたLVLの材料物性値と素材の材料物性値を用い、有限要素法(MSC.MARC2005)によってモデル式の構築を行った。その結果、弾性領域内での力学変化は実験値とほぼ一致することが認められた。しかし、実測したLVLの曲げ弾性率は8599MPaであり、初期破壊ピークにおけるたわみは約9.79mm(標準偏差18.48%)で平均0.98KN(標準偏差6.16%)であったが、モデル式の結果では曲げ弾性率が8796MPaであり、同ピークでの荷重点たわみは5.94mmであった。これは、モデル化において材料の粘弾性を考慮していないことが原因であると考えられた。来年度は、粘弾性領域内でのモデル化の構築と、得られたモデル式を用いてLVLの最適条件化を検討する。
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