本研究は、微小電気機械システム(MEMS)技術と通信波長帯で発光する半導体量子ドット(QD)を内包するフォトニック結晶(PC)を融合することで既存の素子では得られない独創的な機能を持つ新素子の開発を目的としている。本年度はアンチモン(Sb)をサーファクタントに用いることで、通信波長帯に発光波長をもつ高密度かつ高品質なInAs QDの形成技術を確立し、1.3um帯でレーザ発振に成功したので報告する。 本年度は、量産可能な有機金属気相成長法(MOCVD法)を用い、一般的に用いられているInP基板に比べて安価なGaAs基板上に1.3umで発光するQDの形成技術の確立およびレーザの作製に集中した。これまで、GaAs基板上でのQDベースのレーザの発振波長は1.28umが世界最長波長であった。これは、上部クラッド層の高温埋め込みによる波長の短波長シフトと、高品質な高密度QDをこの波長帯で作製することが困難であったためである。そこで我々は通信波長帯1.3umまで発振波長を長波長化するために、Sbをサーファクタントに用いてInAs/Sb : GaAs QDの形成技術を確立し、世界で初めてMOCVD法で1.3um帯のレーザの作製に成功した。 これまでの成果により本研究の遂行に必要な、光通信波長帯のレーザ発振にまで至る高品質、高密度なQDとフォトニック結晶作製技術がそろったといえる。今後、この3年で確立したQD形成技術およびPC作製技術を基にMEMSを組み合わせた新機能素子開発を行う。
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