研究概要 |
本研究では,地震波のトモグラフィーにより深部のマントルから上昇するプリュームに関係していると考えられる海洋島の火山岩に,コア-マントル相互作用の地球化学的証拠が存在するかを検証する.コアとマントル間に同位体の差があると予想される,182ハフニウム-182タングステンの壊変系を用いる. 今年度はタングステシの精製法の開発をまず集中的に行った.既存の精製法ではキンバライトのようにマグネシウム,カルシウムに富む火成岩の精製効率が悪かったため,精製法を改良した.ICP質量分析計を用いたタングステン同位体比測定法についても検討し,182W/183W比が0.4ε程度の正確さで測定可能なことを確認した.改良した分析法はAnalystに掲載の論文に報告した. 改良した方法を用いて火山岩試料のタングステン同位体比分析を行った.これまでに,カナダ,アフリカのカーボナタイト,キンバライトなど20試料程度を分析した.現在まで,タングステン同位体比の異常を持つ試料の発見には至っていない.カーボナタイト試料については炭素,酸素同位体比の分析を行い,成因の解明に役立てる予定である. 鉛などの同位体比から深部起源物質の寄与が示唆されているパキスタンのカーボナタイト試料を40個程度Ali Arshadが採取した.今後,分析を開始する.来年度は微量元素濃度の分析を行い,タングステンの濃度の変化を支配する要因についても考察する.
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