研究概要 |
今年度は、平林らによって見いだされた新規リン酸化糖脂質(FEBS Lett.,2001,497,141-147)の本格的な合成研究を行った。この化合物はヒト臍帯血から見いだされ、グルコースがボスファチジン酸に結合した構造(ボスファチジルグルコシド:PG)が提唱されている。脂質マイクロドメイン(ラフト)を形成して細胞内シグナル伝達に関与することが明らかにされつつあり、その機能解明に興味が持たれる、昨年度、脂肪酸部分が全て飽和された構造をもつ類縁体について合成研究を行い、基本的な合成戦略を確立した。これを用い、ホスファチジルグルコシドの合成を完成させた。本物質のNMRデータから、以前に報告されていた構造を証明した。 今年度は更に不飽和脂肪酸を有するPGの合成を試みた。すなわちグルコースからt-ブチルオルトエステルを経由して得られる亜リン酸化グルコース誘導体を用いて、ピバリン酸クロリドを活性化剤として不飽和ジアシルグリセロールとの縮合を行った。得られた生成物を更にヨウ素で酸化しリン酸ジエステルとした。昨年度検討したグルコースのアセチル基を除去する条件を用い、望む生成物を得た。なお、上記検討の過程において一部グリセロール部位のラセミ化が進行していることが見出されたので、新たな合成経路で光学的に純粋なジアシルグリセロールを合成した。 また、エステル結合をエーテルに置き換えた類縁体、光プローブ化誘導体、樹脂に固定化するための脂肪酸部分の官能基化について基礎検討を行った。
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