本研究は、中国の学校段階間の接続方法(進学方法や試験、学区制、連携の問題など)と、それらに関して国・教育部、地方教育当局、学校、親や児童生徒それぞれの事情や思惑が交錯する中で生じている地域格差に注目することによって、中国社会において学校制度がもつ機能を明らかにすることを目的としている。 前年度に続いて、中国における学校制度の社会的機能を学校段階間の接続と地域格差に注目して研究するために、中国および日本国内において調査・資料収集・分析をおこなった。 調査・資料収集については、主に中国の北京市・上海市・江蘇省および日本国内各都市で実施した。中国では現地の学校を調査すると同時に、現地研究者と討論・意見交換をおこない、また教育関連・中国関連の資料の収集をおこなった。前年度に訪問調査をおこなった西南部の特殊な地区の状況については、文献や現地研究者からの聞き取り等によって、地域格差が生まれている要因やその打開策について詳細に調べることができ、これまで調べた各種規定・法規と関連づけた上で論文として発表した。日本国内では、日本比較教育学会において口頭発表をおこない、また日本人の中国研究者を訪問するなどして、特殊な資料や最新情報の収集と意見交換をおこなった。その他、インターネットによって大量の情報収集をおこなった。また、こうして収集した資料を電子ファイルとしてデータベース化し、分析をおこなった。 これらの調査・資料収集・分析によって、昨年度に把握できた国家・地方の公的な規定がさらに詳細に判明したほか、各地の実際の状況に差異が生じている要因を法規や社会事情と関連づけて考察することができた。
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