本研究は、アフリカにおける具体的な事例研究をもとにして、自然資源の保全と利用にかかわる利害関係者間の交渉の事例を多角的な視点から分析し、地域住民の積極的な意見や行為を保全政策に反映させるための合意形成のあり方を探求することを目指しておこなった。 まず、本研究の事例の対象地であるエチオピアのセンケレ自然保護区とマゴ国立公園に隣接する3つの集落でおこなった過去のフィールドワークの研究成果をまとめ、学会誌(環境社会学研究・African Study Monographs)に発表した。この研究では、野生動物保護をめぐって、複数の利害関係者間が様々な交渉をおこなっている過程を検討することによって、従来の中央集権的な野生動物保護アプローチが、野生動物保護区の現場でボトム・アップと考えられる新たな展開を見せて変化している現状を詳細に記述することができた。さらに、2つの調査対象地を比較検討することによって、エチオピアの野生動物保護政策の特徴を整理することができ、今後、アフリカ諸国の他地域と比較していく上での基盤をつくることができた。 さらに、平成15年度前半には日本ナイル・エチオピア学会で開かれた公開シンポジウムにおいて、昨年度までの現地調査の成果をパネリストの一人として『「フィールドワーク」して学ぶ:ボランティアとしてのかかわり、調査者としてのかかわり』のタイトルで発表し、他のパネリストと討議をおこなった。ここでは、研究の成果を国際協力の中で活用する可能性に関して検討をおこなった。
|