平成16年度は、1920年代の国際協調主義外交の原型を探るための研究と、1930年代のアジア太平洋秩序のありかたを探る研究を中心に行った。 前者については、外務省外交史料館所蔵史料を中心に、ハーグ平和会議における日本の対応を分析することで、日本外交の基調が大勢順応型の国際協調主義になっていったことをしめした。ハーグ平和会議については、外交史の視点からは研究が希薄であり、従来その意義が軽視されていたため、1920年代の国際協調主義外交の原型がハーグ平和会議の時期に現れていたことを強調した。なお、研究内容については、日本国際政治学会2004年度研究大会C-1分科会(日本外交史I、2004年10月16日於淡路夢舞台国際会議場)で発表し、学術論文として、『人文学報』第91号に発表した。 後者については、8月にオーストラリアに行き、オーストラリア国立図書館及び国立文書館を中心に調査を行い、1930年代半ばの日豪親善使節交換についての史料を閲覧・収集した。日豪両国が親善を求めながらも、日本中心のアジア太平洋国際秩序とイギリス中心の国際秩序という意味では、その内実に大きな開きが存在したことを明らかにした。なお、研究内容については、東アジア政治史研究会(2005年3月26日於中央大学後楽園キャンパス)で発表し、近日中に学術論文としてまとめる予定である。 上記の2点に加え、2005年3月にはアメリカに行き、国立文書館・歴史博物館を見学・調査し、歴史認識のありかた及び史料状況の調査を行った。アメリカでの調査は、このプロジェクトで明らかにしたい、近代日本にとっての西洋文明のもつ意味についての予備的調査である。
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