インドネシア域における対流圏界面を、深い対流雲の到達高度(約14km)から東西一様な上昇が現れる高度(約19km)までの幅をもった遷移領域(TTL : Tropical Tropopause layer)として捉え、その生成機構と構造解明を目的とした研究を行ってきた。 本年度は研究代表者が大学院博士課程時代に取り組んでいたインドネシア対流圏〜下部成層圏温度場の季節変化の記述に加え、それらと再解析データとの比較、対流圏界面各要素(温度・高度・気圧)の緯度・経度構造、またENSO時におけるそれらの構造変化に関する解析を行った。特に再解析データとの比較においては、上部対流圏〜下部成層圏での実際の温度構造を比較的再現されているといわれているERA40との系統的な差を指摘することができた。この差はインドネシアとその周辺領域で大きく違っており、インドネシア国内の高層気象観測データが品質も高く、理学的解析には充分使えるものでありながらもこれら再解析データにとりこまれていないことの重要な証拠となった。経年変化においては、再解析データの解析からはENSOに伴って西太平領域の圏界面温度と高度が正相関で変化することが知られていたが、実際には必ずしもその関係が成り立っておらず、個別のケースで考える必要があることがわかった。以上の成果は国外の研究会で発表し、学術論文にまとめて投稿済みである。
|