昨年度から取り組んできた、インドネシア定常高層観測資料に基づく対流圏界面遷移層の温度場(季節変化)に関する研究を取りまとめ、Journal of Geophysical Research誌に投稿、受理された。この論文では、全世界に通報・公開されている高層観測資料や再解析データと我々が独自に収集した資料との比較を行い、公開高層観測資料におけるエラーは通報途中に混入したもので観測自体は正確に行われていること、再解析データには上部対流圏〜成層圏で実際の観測データに対してバイアスが存在すること、対流圏界面温度の季節変化は他経度帯と同じ年周期が卓越するが、緯度構造は東西平均した描像とは異なること(赤道直上で高温、高緯度側で低温)などを明らかにした。 先の論文で示した圏界面温度/高度の季節変化では、年周期変動に加えて約1K/0.5kmの上昇が2月/4〜5月に見られた。この変動は年周期振幅に対して半分程度の振幅をもち、季節変化に対するインパクトも大きいことから、ECMWFが提供している再解析データを用いてその空間構造の把握を行った。結果として、温度上昇は東半球熱帯域やタイを中心に高度方向には上部対流圏〜下部成層圏とに限った場所で見られるのに対し、高度上昇は上部対流圏に最大振幅をもち全熱帯域で現れることがわかった。これらのメカニズムについては引き続き解析を進めている。 年度後半にはインドネシアスマトラ島コトタバンで行われた集中観測に参加、高層気象観測を実施した。同時にインドネシア気象庁の協力を得、国内7地点における定常高層気象観測データと1時間毎の地上気象観測データの収集(2005年10〜12月)に取り組んだ。東進MJO(季節内変動のひとつ)の構造がインドネシア通過時に東西でどう変化するか等を対流圏界面まで含めて明らかにするのが目的であり、先の集中観測のデータを含めてデータ整備を行った(現在も進行中)。
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