研究概要 |
我々は、これまでに、ヒトES細胞から血管内皮細胞および平滑筋細胞に分化しうる血管前駆細胞を同定することに成功した。そこで、本年度は、このヒトES細胞由来血管前駆細胞を用いた血管再生医療の実現を目指し、移植に相応しい血管構成細胞の検索を行った。このヒトES細胞由来血管前駆細胞をVEGF存在下にて継代培養したところ、血管内皮マーカーCD31,VEcadherin,VEGF-R2,CD34陽性の血管内皮細胞が出現し、PDGF-BB存在下で培養したところ、αSMA、カルポニン、SM2が陽性の血管平滑筋細胞に分化した。 我々は、さらに、ヒトES細胞由来血管構成細胞の臨床応用を目指し、マウス下肢虚血モデルにおいてヒトES細胞由来血管内皮細胞または平滑筋細胞、またはその両方を移植し、その血管再生作用を比較検討した。8週齢雄のKSNヌードマウスの右大腿動脈から経動脈的に各種血管構成細胞を移植し、直後に右大腿動静脈を結紮切除した。下肢虚血モデル作成後、レーザードップラー血流計にて下腿皮膚表面血流を経時的に観察したところ、コントロール群と比較し、ヒトES細胞由来血管構成細胞移植群において、有意な血流増加を認めた。この効果は、ヒトES細胞由来血管内皮細胞および平滑筋細胞を同時に移植した群において著明であった。術後42日目における虚血側下腿筋の凍結切片を用いた免疫染色の結果から、血管内皮マーカーCD31および平滑筋マーカーαSMA陽性capillary densityは、レーザードップラー血流計の結果同様、ヒトES細胞由来血管内皮および壁細胞両者移植群において有意な増加を認めた。
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