研究課題
AIDは、抗体のクラススイッチ(CSR)および体細胞突然変異(SHM)に必須の分子であり、AIDの制御あるいは機能異常が癌化を引き起こし得ることが明らかになっている。そこで、AIDがクラススイッチ組換えおよび体細胞突然変異に関わる詳細な分子機構とその制御機構の解明を目的とした。本年度は、以下の成果が得られた。1.AIDの作用機序を明らかにするために、AID結合タンパク質の同定を目的とした。B細胞株CH12F3-2にAIDを過剰発現させた系を用いて昨年度に同定した、AIDと共沈する約20種類のタンパク質について解析を進めた。まず、同定した候補タンパク質に対する抗体を用いた免疫沈降法によりAIDと候補タンパク質との結合を確認した。また、クラススイッチ人工基質を導入した線維芽細胞株を用い、クラススイッチにおける候補タンパク質のノックダウンの影響を検討した。ノックダウンにより、クラススイッチの効率が著しく低下する分子を見出した。2.B細胞におけるAIDの過剰発現がクラススイッチおよび体細胞突然変異に及ぼす影響、さらに染色体転座や癌化におけるAIDの関与を検討するために、B細胞特異的AIDトランスジェニックマウスの解析を行った。その結果、B細胞においてトランスジェニックAIDは内在性AIDよりも過剰に発現しているにも関わらず、クラススイッチ及び体細胞突然変異を誘導する活性が内在性AIDよりも有意に低いことが明らかになった。また、このトランスジェニックマウスではB細胞腫瘍の発症は認めなかった。このことから、B細胞にはAIDの活性を負に制御する仕組みが存在することが示唆された。
すべて 2006
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Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.103, No.8
ページ: 2752-2757