蝶の成虫の寿命は短い。そのため、上手く繁殖できるように短い成虫期間を有効に活用する時間の使い方を進化の過程で獲得して来たと考えられる。蝶が配偶・産卵・吸蜜などに時間をどのように配分し、一日の時間をどのように活用しているかを明らかにするため、本研究ではベニシジミを対象に個体追跡を徹底して行い、本年度はまず一日の行動の日周パターンを把握した。 本種のオスは8時台〜16時台に飛行または歩行が見られ、その頻度は気温に影響されていた。しかし、全般に草や花にとまっている時間が90%以上を占めており、明確な日周パターンは見られなかった。低温では歩行を、高温では飛行をする傾向があった。花にとまっている時間がメスに比べて長かったが、花上では口吻を伸ばしている吸蜜行動と口吻を伸ばさないメスを待伏せる行動の二種類が見られた。この二種類の訪花行動ではメスを待伏せる方がやや早い時刻に行われる傾向があった。 メスは10時台〜15時台にオスより盛んな飛行・歩行の活動が見られた。活動頻度は照度の影響を受けたが、時刻も重要な要因になっており、日周期活動スケジュールを進化させていることが示唆された。オス同様、低温では歩行を、高温では飛行をする傾向があった。前半の10時台〜13時台には主に食草のスイバやギシギシを探して飛び回り、食草を見つけると根本まで歩いて行き産卵した。後半の14時台〜15時台には訪花をしていた。メスは花の上にいる間はほぼ常に口吻を伸ばしており、吸蜜のためだけに訪花していると考えられた。
|