本年度は、Geotail衛星に搭載されているEPIC観測器で得られた高エネルギー粒子データを用いて、磁気嵐時に磁気圏から惑星関空間に流出するイオンエネルギー量を見積もり、その流出量と磁気地方時依存や太陽風パラメータとの相関を調べた。また、イオン流出過程の磁気嵐回復に対する寄与を定量的に明らかした。 我々は、Geotail衛星が磁気嵐中に磁気圏界面を横切った58個のイベントについて、流出エネルギーを見積もった。流出エネルギーには地方時依存性が見られ、夕方側では朝側よりも多くのエネルギーが流出していた。太陽風パラメータとの相関を調べたところ、エネルギー流出量は太陽風電場とはほとんど相関がなく、太陽風動圧と非常によい相関が見られた。太陽風動圧が強い時、すなわち磁気圏が強く圧縮されている時に、エネルギーが多く流出していた。これらの結果は、イオンの磁気圏外への流出は対流電場に伴うExBドリフトよりも磁場勾配ドリフトに大きく影響を受けていることを示唆している。 我々はさらに2001年9月23日に発生した磁気嵐の早い回復相について、全流出エネルギー量を見積もり、環状電流エネルギーの減衰量との比較を行った。流出領域の見積もりには、磁気圏外に位置したGeotail衛星で観測された惑星関空間磁場の変動を用いた。その結果、磁気圏から流出したイオンの全エネルギーは、地磁場変動(Dst指数)から見積もられた環状電流エネルギーの減衰量の23%以上を占めることがわかった。この結果により、イオンの磁気圏からの流出は磁気嵐の回復に大きく寄与していることが定量的に示された。 上記の結果は、現在Journal of Geophysical Research誌に投稿中である。
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