本年度は、はじめに、昨年度取り組んだイオン流出過程の磁気嵐回復に対する寄与を定量的に明らかにした研究をまとめた論文が、Journal of Geophysical Research誌に受理された。次に、IMAGE衛星に搭載されているHENA撮像器で得られた高エネルギー中性粒子データを用いて、最もよく知られている消失過程である中性粒子との電荷交換反応が、どの程度磁気嵐の回復に寄与しているかを観測データのみから見積もった。また、この見積もりを複数の磁気嵐回復相について行うことで、電荷交換反応過程の寄与を統計的に評価した。我々は、2001年9月から2002年12月までに発生した磁気嵐について、IMAGE衛星が磁気緯度60度以上かつ地心距離6地球半径以遠に位置する期間を選び出し、電荷交換反応による環状電流イオンエネルギーの消失率を統計的に見積もった。エネルギー消失率の見積もりには、電荷交換反応により生成された高エネルギー中性粒子の観測をもとに、研究代表者が新しく発案した2つの方法を用いた。その結果、電荷交換反応によるエネルギー消失率は、環状電流エネルギーの減衰率よりも、一桁以上小さいことが示された。また、電荷交換反応によるイオン消失量は、環状電流の大きさには依存するが、その減衰率とは相関が見られなかった。さらに、観測されている磁気嵐の速い回復(環状電流の速い減衰)は、電荷交換反応のみでは説明することができないという、これまでの環状電流モデリングで得られていた結果とは異なった結論が得られた。上記の結果は、現在Journal of Geophysical Research誌に投稿準備中である。また、昨年度に得られた成果も合わせて博士論文をまとめ、博士の学位を取得した。
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