研究概要 |
有限長データから見積もられたトレンドには誤差が含まれており、見積もられたトレンドの有意性を統計的に検定する必要がある。そのためには外部変動の変化に起因する真のトレンドからのずれである見かけのトレンドの分布関数を知る必要がある。一般的な統計的仮定のもと見かけのトレンドのモーメントおよび分布関数を求めた。内部変動が正規分布に従う場合は見かけのトレンドも正規分布に従うことを示し、一般的な分布関数に対し、見かけのトレンドの分布関数のエッジワース展開を導き出した。その結果、見積もられたトレンドの有意性を正確に知るためには内部変動の分布関数を知る必要があることを指摘した。簡単な数値実験(擬似乱数を使ったモンテカルロシミュレーション)および複雑な数値実験(3次元大気循環モデル実験)を行い、エッジワース展開を使用したより正確な有意性検定の方法を示した。 見かけのトレンドの議論には内部変動の分布を知ることが必要であるが、有限長データから内部変動を推定すると誤差が生じる。本研究では、3次元大気循環モデルを用いた長期間積分を行い、15,200年間という長期間のデータを取得した。このデータを用いてモデル内での大気変動のモーメントの空間・季節分布を調べ、内部変動が正規分布からずれているために、見かけのトレンドが正規分布であると仮定することができない領域があることを示した。また、同じモデルを用いて外部強制にトレンドを与えたアンサンブル実験を行い、内部変動と見かけのトレンドの関係を明らかにした。
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