荷電K中間子の稀崩壊モードK^+→π^+ννの探索に関する解析作業を行った。このモードの崩壊分岐比は10^<-10>レベルと非常に小さい為、観測を妨げるバックグラウンド事象を十分に落とし切る事と、落としきれなかった場合バックグラウンド事象が信号領域へ混入する確率を精度良く見積もることがこの解析の鍵となる。私は、主たるバックグラウンド事象の一つであるK^+→π^+π^0事象を棄却する為の研究を行った。このモードを棄却するにはπ^0から来る二つの光子を捕まえる必要があり、光子棄却用検出器の性能を最大限に引き出す解析が必要となる。立体角にして4πを覆う多くの光子検出器の基礎性能を洗い出し、このバックグラウンドを最適に落とすカットを求め出した。当然、これらのカットは信号イベント+"何らかのアクシデンタル事象"がオーバーラップして起こった場合、信号事象までも棄却してしまう。そこで、この誤って信号事象を棄却してしまう確率をサイドバンド事象K^+→μ^+νを使って実際のデータから高い信頼性で見積った。ベストカットの決定にはこの(1)バックグラウンド棄却能力と(2)信号を誤って棄却してしまう確率を同時に測定しながら、最適化を行うパラメータスキャンが必要となる。私はこの作業を行い、前実験の値の約2倍のバックグラウンド棄却能力を持つカットの設計に成功した。また、このカットを抜けてくるバックグラウンド量を正確に見積もるため、独立な2つのカットが持つ数学的性質を利用してシミュレーションを使わず実際のデータから予測する事に成功した。最終的にこの実験では1つの信号候補イベントの検出に成功し、私はこのイベントがどれだけ望む信号であるかという確率を出すため、K^+→π^+π^0が誤って信号事象に見えてしまう確率を求めた。これらの結果は2004年度にphysical review letterに掲載されており、"Improved Measurement of the K^+→π^+νν Branching Ratio" Phy.Rev.Lett.93(2004)031801で見ることができる。
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