研究概要 |
つくば神岡間長基線ニュートリノ振動実験(K2K)ではニュートリノビームのエネルギー分布・フラックスを生成直後、そして250km離れた水チェレンコフ検出装置(スーパーカミオカンデ)にて測定することによってニュートリノ振動現象を検証する。本年度は新たなデータを収集するとともに、前年度までに収集したデータの解析を行い、ニュートリノ事象数の減少とエネルギー分布を観測してニュートリノ振動パラメータを導き出した。 まず、本研究のために建設した新型のニュートリノ前置検出器(SciBar)によるニュートリノエネルギー分布・フラックスの測定に専心した。検出器のエネルギー校正および性能評価、モンテカルロシミュレーションの調整、ニュートリノイベント再構成のための解析コードの開発を行い、ニュートリノフラックス導出した。この測定結果をもとにスーパーカミオカンデで観測された事象数およびエネルギー分布の比較を定量的に行った結果、ニュートリノ振動がない場合に予想される事象数151に対して観測したのは107という統計的なふらつきよりも有意な事象数の減少、さらに振動が起こったときに見られる特徴的なエネルギー分布の歪みを観測し、99.995%の確率でニュートリノ振動が起きてないという仮説を棄却した。振動パラメータについては混合角sin^22θ=1.0,質量二乗差Δm^2=2.8×10^<-3>eV^2という値を得たが、これはスーパーカミオカンデの大気ニュートリノの観測結果と非常に良く一致している。 さらにニュートリノ振動パラメータの測定精度向上、ニユートリノ振動現象の存在を確定的なものにするために生成直後のニュートリノビームの測定精度を向上を行った。K2K実験では振動の特徴であるエネルギー分布の歪みが1GeV以下の領域に現れるためこの領域でのエネルギー分布の精密測定が振動に対する感度の向上に重要であるが、SciBar検出器のデータにおいてあらたな解析手法によってこれまでの解析と比較して1GeV以下のニュートリノ事象数の測定を50%以上改善した。
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