アルカリ原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体では、磁場により原子のスピン自由度を制御して量子数2以上の渦を作ることが可能である。我々は、量子数4の渦の生成過程における重力の影響を考察した。渦は磁気トラップの四重極磁場を利用して生成されるが、重力下では凝縮体は磁場の中心からずれてトラップされ、渦は凝縮体の中心からずれた位置に生成される。また渦生成過程で生じるスピン状態の異なる成分が、重力の影響により複雑に相互作用する。我々は重力下での渦生成の数値シミュレーションを行い、上記の影響により、重力を無視した場合に比べて渦が不安定になりやすいことを示した。また、状況によっては量子数4の渦が量子数1の渦に分裂する様子が観測されうるという興味深い結果が得られた。 フェルミ原子のフェッシュバッハ共鳴を利用すると、原子間相互作用の強さを磁場により自在に操作でき、弱結合のBCS超流動から2原子分子のBECへと移り変わる「BCS-BECクロスオーバー」が実現可能である。我々は、このクロスオーバー領域における渦状態について調べた。ボース粒子、フェルミ粒子について、各々の単独の凝縮相における渦を考えた場合、ボース粒子系の渦は渦芯で粒子数密度がゼロになるのに対し、フェルミ粒子系ではエネルギーギャップのつぶれた渦芯に局在するモードがあり、粒子数密度はゼロにならない。クロスオーバー領域ではこれらの異なる渦構造をもつフェルミ原子ペアと分子の間で入れ替わりが起こるため、渦の構造に大いに影響があると考えられる。我々は平均場近似を用いて、原子・分子の各状態にある粒子数分布を求めた。その結果、分子の数が増えるにつれ渦芯に存在する原子の数が減少するという振る舞いがみられた。これは単に原子の絶対量が減少するためだけではなく、分子のBECの影響をうけて、原子の分布自体が渦芯付近で急激に減少する形に変化していった。
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