超平面配置の組合せ論的性質を主に代数幾何学的な視点から研究した。 具体的な成果としてはEdelmanとReinerによって1996年に提出された予想を解決した。これはルート系に付随したある種の超平面配置の自由性に関する予想で、主に組合せ論的な視点からの様々な状況証拠が積み重ねられていた。もともと組合せ論的な背景を持った問題であったが、問題を代数幾何的な視点から定式化することによって、先行する寺尾宏明の研究や、代数幾何におけるベクトル束や反射層の研究との関連が明確になり、自然な形で最も強い結果を証明することができた。 以上の研究過程においては扱う反射層は超平面配置に由来するものを念頭においていたが、最近京都大学の阿部拓郎との共同研究により、一般の反射層に対する分裂判定法が得られた。これはHorrocksによってベクトル束の分裂判定法として知られていたものの反射層への一般化である。 上記の研究とは別に、実数係数の一次式で定義された超平面配置の補集合の研究を行った。このような因子の補集合のセル分割を調べる上で最も基本的なのはZariski-Lefshcetzの定理であるが、この定理ではセルの貼り付き方については何も主張していない。ホモトピー型を知るためには貼り付き方を調べるのが必要不可欠なのだが、3次元以上のセルの貼り付けについてはほとんど研究がなかった。これに対して最近上記の超平面配置の補集合での貼り付け写像の記述を行った。手法は実超平面配置のChamberの組合せ論的構造と複素化補集合のモース理論的考察の組合せによる。高次元でのZariski-Lefschetzの定理の貼り付け写像が明らかになった最初のケースであろう。
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