研究概要 |
当研究室では、近年、金属-酸素-金属構造を有する光学活性ルイス酸触媒の有機合成化学の分野における実用性について検討を行っている。本研究においては、各種アルデヒドの不斉アリル化に対し高活性を示すことが見出されている、2,2-ビナフトールを不斉配位子として用いたチタン-酸素-チタン架橋を有する光学活性ルイス酸触媒の汎用性の検討および活性化機構の解明に取り組んでいる。 今回本触媒をニトロンとα,β-不飽和アルデヒドを用いた不斉1,3-双極子付加環化反応へ適用したところ、高選択性を示すことを見出した。通常、ルイス酸を用いた電子不足α,β-不飽和カルボニル化合物とニトロンの不斉1,3-双極子付加環化反応は、十分な活性化を得るためには実用的観点からは望ましくない特殊な基質の使用が必要とされており、今回の研究では入手の容易なα,β-不飽和カルボニル化合物であるアクロレイン、および脱保護の容易なニトロンを用いて高活性を得られた点は特に注目すべき成果と言える。 具体的には各種N-アリーリデンベンジルアミン N-オキシドおよびN-アルキリデンベンジルアミン N-オキシドを1,3-双極子、アクロレインを求双極子剤として用いた環化付加反応に際し、同触媒を用いることにより、おおむね良好な収率で生成物が得られ、さらに最大で97%eeというほぼ完璧な高エナンチオ選択性の発現が確認された。なお本反応で得られる光学活性イソオキサゾリンは簡単な還元過程を経ることにより、生理活性を有する各種1,3-アミノアルコールに変換可能であることからも本研究の合成的価値が伺える。
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