当研究室ではリビングラジカル重合法を表面開始グラフト重合に応用し、長さ、長さ分布の制御された高分子鎖を従来法に比べて約10倍高い密度でグラフトする技術を確立している。また、この高密度ブラシは良溶媒中で伸びきり鎖に匹敵するほど高度に伸張しており、これまでに見られなかった新しい構造・機能特性を発現することがわかっている。本年度はこのような高密度グラフトブラシの特性を生かして、特にその表面が極めて重要な役割を担う生体材料や生体内センサーを念頭に、その表面特性として重要なタンパクとの相互作用について検討した。具体的には、水晶振動子(QCM)法により密度の異なるpoly(2-hydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)ブラシへのタンパク吸着量をin-situで測定し、吸着阻害特性とグラフト密度の相関について検討した。 高密度PHEMAブラシ(グラフト密度:d=0.6chains/nm2)は表面開始リビングラジカル重合法により、低密度ブラシ(d=0.01chains/nm2)は従来法のひとつ、grafting to法により調製した。各PHEMAブラシ表面に対し、ウシ由来アルブミン(BSA)(Mw:67000)溶液(1000□g/ml PBS溶液)を播種した。その結果、高密度ブラシ表面ではほとんど吸着はなく、低密度ブラシに比べて高い抗接着性を示すことが明らかとなった。また、分子量の異なるタンパク(IgG(Mw:150000)、ミオグロビン(Mw:17000)、アプロチニン(Mw:6500))についても、高密度ブラシ表面では吸着が飛躍的に抑制されることが明らかとなった。
|