タンパク質合成の場である小胞体には品質管理機構が備わっている。小胞体に異常タンパク質が蓄積すると、細胞は小胞体シャペロンや異常タンパク質分解(ER-associated degradation(ERAD))に関わる遺伝子の発現を調節し、小胞体ストレスから防御している。この応答はUnfollded protein response(UPR)と呼ばれている。 UPRで転写制御される遺伝子を同定するため、HeLa細胞を用いたDNAマイクロアレイ解析を行った。対象とした約2万種類の遺伝子のうち、UPRの標的遺伝子の一つとして、出芽酵母のDer1遺伝子と相同性を示す新規遺伝子Derlin-2を同定した。また、データーベースを検索した結果、Derlin-2に非常に相同性の高いDerlin-3を見い出した。 Derlin-2 mRNAの発現は小胞体ストレス誘導性を示し、IRE1αおよびXBP1ノックアウト細胞においてはその誘導が見られなかった。このことからDerlin-2は、IRE1-XBP1経路で制御されるERAD関連遺伝子としてEDEMに次ぐ2つめのターゲットであると考えられた。免疫染色により細胞内の局在を調べたところ、Derlin-2は小胞体に局在することが明らかとなった。また、Derlin-2のERADへの関与を検討したところ、Derlin-2を過剰発現することにより、変異型α1-antitrypsin(NHK)の分解が促進されることが示された。これらの結果より、Derlin-2はIRE1-XBP1経路で制御される新規ERAD関連因子である可能性が示唆された。
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