研究課題
野生チンパンジーは複雄複雌の群れのなかで生活している。しかし、いつもその構成個体全員で遊動してはいない。実際にはそのなかで小さなサブグループをつくり、状況によってその個体構成や個体数を変化させる。そうした離合集散性と表現される社会構造は、先行研究においても大きく論じられてきた。果実など食物の量にどのように対応しているのか、社会的な「つきあい」方はどのようなものか、パントフートと呼ばれるロングコールがどのように影響するのか。これらに対して多くの考察をあたえてきたが、これまでの研究では、1観察者がみているサブグループの構成および個体数から推定するため、群れ全体でみたとき実際どのようにサブグループに分かれているのか、サブグループがある程度離れてもそれぞれの遊動になんらかの影響を与えているのかといった複数のサブグループを考慮に入れた疑問にはこたえることができなかった。平成16年度は採用初年度であり、チンパンジー複数個体を同時追跡する調査をギニア共和国ボッソウにておこなった。ギニア共和国に滞在した期間は4月から10月までの約7ヶ月だった。当該地域に生息する野生チンパンジーの群れにいるオトナオス3個体を対象とし、そのうちからランダムに1個体を選択して終日個体追跡した。残りの2個体を現地アシスタントに同時に追跡させた。調査の結果、追跡個体に関する詳細なデータ(採食行動、社会行動などの筆記およびビデオ撮影による)を得ることができた。またGPSにて3個体の位置を常時記録したため、土地利用と個体間距離の算出に用いることのできるデータを得た。また、今回の調査のなかで道具使用行動や求愛行動の詳細な記録も得ることができた。帰国後は持ち帰ったデータの整理をおこなった。持ち帰ったデータの一部は3月におこなわれた国際ワークショップにて口頭発表した。
すべて 2004
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霊長類研究 20・1
ページ: 45-55