研究概要 |
本年度は,日本におけるNGO間ネットワークの地理的編成に関する調査研究を行った。近年の日本では,個々のNGOが増加するとともにそれらのネットワーキングが進んでおり,特に,日本各地で地域型ネットワークNGOと呼ばれる,NGO間のネットワークを目的とする組織の設立が相次いでいる。そこで複数のネットワークNGOに対するインタビュー調査を実施し,設立や活動に関する全国的な実態を明らかにするとともに,ローカルな役割や機能を明らかにした。また,ネットワークNGO間の全国的なネットワーク構築をめぐる議論をもとに,地域型ネットワークNGOが持つ相対的な地域認識を提示し,それを都市システムの観点から位置付けた。調査の結果,地域型ネットワークNGOの設立は全国的に展開しており,自治体や市民,NGOに対する地域の窓口として機能していることが示された。また全国的なネットワーク構築においては,全体の影響力拡大と地域の自律性を主要な対立軸として議論が行われており,その背景には日本の国家的都市システムが組織環境として存在していることが明らかになった。 また,NGOあるいは国際協力以外の活動を行うNPO法人全体を対象として,その立地展開を詳細な地域単位において分析した結果,東京に著しく偏在する傾向が示された。他方,近年では地方部に位置するNGOも増加しており,これらのNGOは,それぞれの地域資源を発掘・利用することで活動している。そこで,NGOにおける地域資源の利用や,そのための地域密着という戦略についてインタビュー調査を行った。その結果,NGOは海外に資金や物資を送るのみという一方的な支援ではなく,開発教育や地域住民が参加可能な事業の開発を通じて,様々に「地域」を資源化し活動していることが明らかになった。
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