研究概要 |
本研究の目標は行列模型を用いて超弦理論の構成的定式化をする事である。今年度は、そのための準備段階として、主に次の3つの研究を行なった:(1)簡単化された模型(非臨界弦理論)の構成的定式化の研究、(2)IIB行列模型における真空の構造の研究、(3)IIB型行列模型の局所ローレンツ対称性が明白な拡張。以下、これらを順に説明する。 (1)簡単化された模型(非臨界弦理論)の構成的定式化の研究 非臨界弦理論は、現実の物理に対応しているわけではないが、現実の物理を記述すると考えられている臨界弦理論と共通する性質を持つ興味深い模型である。本研究では、非臨界弦理論における非摂動効果を記述するある種の量D-インスタントンの化学ポテンシャル)がループ方程式からは決まらず、行列模型を用いれば決定できる事を示した。この結果は、臨界弦理論においても行列模型を用いた定式化が強力であろう事を示唆している。この結果は、Prog.Theor.Phys.112:131-181,2004に掲載された。 (2)IIB行列模型における真空の構造の研究 IIB行列模型は超弦理論の構成的定式化の候補と目されている。本研究では、この模型における非可換時空の安定性を議論した。本研究の結果、4次元的な広がりを持つ非可換時空は不安定であり、従ってIIB行列模型が4次元的に広がった時空を真空として持つならば、それは可換時空である事が分かった。この結果は現在Nucl.Phys.に投稿中である。 (3)IIB型行列模型の局所ローレンツ対称性が明白な拡張 IIB型行列模型の欠点として、局所ローレンツ不変性が明白でなく、曲がった時空が記述しにくいという点が挙げられる。本研究では、この欠点を解消する様にIIB型超弦理論を拡張した。しかし、この定式化では超対称性を保つのが難しい。現在この点を改良中であり、近日中に論文にまとめる予定である。
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