本年度は中性K中間子稀崩壊実験で用いる光子検出器の開発を中心に研究を行った。 この検出器は中性K中間子稀崩壊実験を構成する検出器システムの一つであり、高レートの中性ビーム中で動作することが求められる。そのため、エアロジェルをチェレンコフ放射体として用いる閾値型検出器のデザインが考えられている。ここでチェレンコフ発光体に屈折率の小さいエアロジェルを用いることで、中性子起源の低速荷電粒子に対してのみ不感性をもつことができる。 はじめに、計算機によるモンテカルロシミュレーションを行い、実験全体に対する本検出器の寄与や本検出器に対する性能要求に関する詳細な検討を行った。その結果、本検出器の光子不感率が原因で生じるバックグラウンド事象数は実験全体で期待されるバックグラウンド事象数の約1割程度に抑えられていることを確認した。また、高レートの中性ビーム中での光電子増倍管のシングルレートなどを見積もり、動作可能な範囲に収まっていることを確認した。これらの研究によって本検出器の具体的かつ現実的なデザインが確立された。 ここまでの研究を踏まえて、検出器の量産に先立つプロトタイプモジュールの設計を行った。この中で重要なコンポーネントである集光鏡の試作を行った。 また、チェレンコフ発光体として重要な役割を持つエアロジェルの光学特性を簡易に評価するシステムを構築した。このシステムはエアロジェルの波長依存性を含めた光透過率やチェレンコフ発光量の測定を簡易に行うことが可能である。これにより、検出器モジュールを量産する際に必要となるエアロジェル品質管理システムが確立された。
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