研究概要 |
本年度の研究では、1,フォトニック結晶レーザのさらなる高性能化へ向けて、分布帰還効果の基礎となる2次元結合波理論の構築を目指すとともに、2,フォトニック結晶格子点の形状制御とビーム特性の評価を行った。 1,2次元結合波理論の構築へ向け、基本となる2つの偏光(TE,TM)に対して2次元モデルを提案し結合波方程式を導出した。モデルで重要なのは、波の表現としてブロッホ波のうち適切な次数(本研究では1次)の項を取り込むことである。これにより、正方格子構造中のTE偏光に対して、初めて2次元的な光の結合を説明した。また、数値計算により、共振モードの周波数としきい値利得の検討を行った。研究の結果、現在発振を確認しているバンド端モードと対になるモードの存在が明らかとなった。このモードで発振した場合、ビームの断面形状・偏光方向は、リング状の径偏光となる。径偏光ビームは、回折限界以下への集光能力などから最近注目を集めているが、本研究によりその実現には端面での反射位相の調節、および電極形状を環状にすることが有効であることも見出した(特許出願中)。 2,フォトニック結晶格子点の形状を三角形とした場合のビーム特性を評価した。この場合、底辺に垂直な電界成分はその反対称性から面垂直方向への放射は抑制される。一方、底辺に平行な電界成分は、完全な反対称とはならないために、面垂直方向への放射は許される。結果として出射ビームは、底辺に平行な電界成分をもつ単峰性になると期待される。測定の結果、ビームは単峰であり、積分した偏光強度比は「底辺に平行な偏光:垂直な偏光=10:1」となることを明らかにした。さらに、三角形の格子点を用いることで、ビーム出力の向上が同時に実現され、単一モードの面発光レーザとしては、世界最高の46mWを記録した。本成果は、該当分野の研究者から高く評価され、レーザに関する国際会議CLEO'06で、招待講演として発表予定である。
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