転写抑制因子Hes7は未分節中胚葉(PSM)で周期的に発現の増減を繰り返し(オシレーション)、Hes7ノックアウトマウスの解析から、体節の規則正しい形成に関与することが分かっている。 Hes7タンパクのオシレーションには、ユビキチン化とそれに伴うHes7タンパクの速やかな分解が必要であると考えられた。そこで、Hesタンパクに7つあるリジン残基をそれぞれ1ずつアルギニン残基に置換した変異体を作り、それぞれの半減期及び転写抑制活性を測定した。この結果、14番目のリジン残基がユビキチン化されるらしいことが分かった。 次に、この14番目のリジン残基をアルギニン残基に置換したノックインマウス(K14R)を作製した。K14Rのホモ接合体は、初めの2-3個の体節形成は正常で、Hes7タンパク及びmRNAのオシレーションも観察できる。しかしこれ以降は体節形成が乱れ、Hes7の発現のオシレーションも消失していた。数理モデルを使った検証から、Hes7 K14Rは初めの2-3回は正常にオシレーションするが、その後はオシレーションしなくなることが確認された。 一方、Wntシグナルの抑制因子であるAxin2もPSMでオシレーションするが、Hes7 K14RにおいてもAxin2の発現のオシレーションは残っていることから、両者の発現のオシレーションは別々に制御されていると思われる。 次にHes7の発現そのものではなく発現がオシレーションすることが規則正しい体節形成に必要であると考え、Hes7プロモーター下にHes7を発現するトランスジェニックマウスを作製した。このマウスでは体節形成が乱れており、Hes7の発現のオシレーションが規則正しい体節形成に必須であることが分かった。
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