当研究は1.「ガロア逆問題における構成的研究」、2.「代数多様体上乗法的な二次形式の理論の構築」からなる。後者研究のため、昨年度から引き続いて、今年度の前半4ヶ月はドイツ・Regensburg大学(レーゲンスブルク大学)において研究を行った。二次形式の分野において著名な研究者であるKnebusch教授のもとにおいて研究を行い、Regensburg大学Oberseminarに於いて研究成果を発表すると共に、同教授のグループの研究者達とも様々な情報交換、議論を行った。 1.「ガロア逆問題における構成的研究」に関して、有理数体上のネーター問題の研究及び生成的多項式の構成に関する研究を行った。これまで得られていた可換群(特に巡回群)に対するネーター問題の肯定的解決という成果を、メタアーベル群というクラスの非可換群に対して拡張することを目標とした。これまで同問題が解決をみていた6次以下の場合に加えて、次数15以下の場合(ただし8次の場合を除く)、n次対称群中に於けるn次巡回群の正規化群及びその部分群に対する同問題を肯定的に解決した。 さらに橋本喜一朗氏、陸名雄一氏(ともに早稲田大学)との共同研究として、8次巡回群及びその8次対称群中の正規化群に対する、有理数体上のネーター問題及び生成的多項式の構成に関する研究を行った。これまで非有理的であることが知られていた8次巡回群の作用による不変体に対して、新たなる知見を与え、その構造を明らかにした。この結果はプレプリントとして公表され、現在学術雑誌に投稿中である。特に、ドイツ滞在中にこの論文に関する結果についての講演を依頼され、Heidelberg大学及びMuenchen工科大学においてセミナー講演を行った。またザーランド大学コロキウムにも招待されて講演を行い、ドイツの数学者との交流を深めた。
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